2008年のリーマンブラザーズ破綻をキッカケに到来した世界金融危機。
個人投資家が向かい合うマーケットも、その破綻を境に大きく様変わりしたのではないかと思う。
数年前であれば、数億円規模の利益を手にした個人の話題がメディアを賑わせていたものである。
しかし、今や牧歌的な時代は終わりを告げ、20世紀型金融システムは終焉を迎える段階に突入しつつある。
そうした過酷な環境下で、個人投資家が出来るだけ損害を押さえつつ、着実に収益を手にするにはどうすれば良いだろうか?
我々なりに試行錯誤しながら、得られた手がかりや規則性を踏まえ、基本と原点に立ち返るという意味も込めて、初級的解説を以後お届けして参りたい。
§ 金融危機時代におけるマーケットとは?
まず、マーケットの性質がすっかり様変わりしていることを踏まえねばならないだろう。
数年前であれば、多少の程度の差こそあれ「一般投資家層の裾野を広げつつ、プロは儲ける」といった性質があったように感じられる。
インターネットを介した株取引ブームやFX取引ブームなど、個人投資家の裾野が成長していた時期である。
そうした時期には、比較的多くの人が恩恵にあずかることが出来た。
それはマーケットそのものが成長していたからである。
しかし今は違っている。
20世紀型金融市場は、そう遠くない将来、自ら内包する矛盾と歪みに耐えきれず自己崩壊するのは避けられないだろう。
そうした最終局面の中における、火事場の下克上的な性質のマーケットなのである。
§ 変質する世界、金融界のラストスパート
さらに重要なことは現在、
金融・政治・経済・地政学的リスクの垣根は限りなく低くなっており、渾然一体となったものになりつつある ことである。
政治の動きや地政学的なイベントが、露骨なまでにマーケットに影響を及ぼしてくるのである。
当然、大規模なマネーが動くとなれば、意図的に政治面や地政学面に介入・干渉することも決して少なくはないだろう。
もっと踏み込んで言えば、
インサイダーたちはその立場を最大限に活用して、今までにないほど貪欲に収益を荒稼ぎしている と言うことである。
それが最近、欧米で巻き起こっている金融規制の流れの根幹にある。
どうやらウォール街を中心とする世界の金融界は、ラストスパートをかけているようである。
20世紀型金融市場が崩壊する前に、アクション映画のラスト近くの脱出シーンのごとく、全力で荒稼ぎをして、ギリギリのタイミングで撤収しようとでも考えているのだろう。
他にも「事実は小説よりも奇なり的」な、にわかには信じがたい情報が、意図的に仕組まれているのか、漏洩しているようであるが、ここでは割愛する。
ただし、しばらく前では「陰謀論だ!」の一言で片付けられていたような事案が、次々と内部告発やら突然の文書公開などで、ジワジワと現実の舞台に姿を見せつつある傾向にある
横道にそれてしまったが、
現在我々が目の当たりにしているのは「一つの時代の終わり」であり、災いの大渦――メイルシュトローム(maelstrom)のようなマーケットということである。
数年前と同じ感覚では、矢継ぎ早に襲ってくる突発的アクシデントを前に、茫然自失となってしまうだろう。
§ 絶望的な状況下、個人投資家に対抗策はあるか
従来的なファンダメンタル予想やテクニカル予想も依然として有効なのだが、段々とマーケットの動きに当てはまらなくなりつつある。
超高頻度取引(ハイフリーケンシートレード)やフラッシュオーダー取引など、大手米国投資銀行が自由自在に相場を操縦してくるような状況なのである。
今までなら多少の自制心が働いていたのかもしれないが、現在は自制心のカケラすら見られない。
(それゆえに、余りの横暴ぶりに米国議会が業を煮やして金融関係者を呼び出したりするわけであるが……)
短期投機筋などとメディアでは呼ばれているヘッジファンド団が、大手の欧米系金融機関の別働隊として(=金融特殊部隊といっても良いだろう)マーケットで荒稼ぎをしているのである。
疑似餌で魚を釣るように、マーケットを操縦し、まとまった数の投資家が飛びついてきたところでハシゴを外すという方法を、今までにない頻度で使ってくることだろう。
ファンダメンタルをしっかり分析し、テクニカル分析を重ね合わせて参戦する慎重な投資家たちが、その行動ゆえに裏をかかれるという皮肉な結果になるのである。
このように、短期投機筋が責め続ける間、彼らは思いのままにマーケットを操縦してくる。
人為的要因でどのようにでも変化するマーケットの流れを読むことは至難を極めるだろう。
従来のテクニカル分析やファンダメンタル分析を踏まえれば信じられないような突発上昇と突発下落が、かなり短い間に繰り返されることも珍しくない。
発表された経済指標が悪かったのにマーケットが暴騰したり、予想を上回る内容だったのにマーケットが暴落したり、事例は事欠かないだろう。
もっとも、買い手が付かない紙くず証券や債券に対して、格付け機関がトリプルA格付けを未だに付与している有様である(=言うまでも無く確信犯的に)
個人投資家にとっては絶望的な状況だが、数少ないものの対策を講じることが出来る。
一つは長期間保有で、短期投機筋に対抗するというものである。
欧米の金融勢力は、短い期間内に収益を上げなければならない状況に置かれている。
それを逆手に取れば、欧米の金融勢力が時間切れとなるまで堪え忍ぶことが出来れば「我慢勝ち」ということになる。
これはある程度まとまった量の資産を、株や債券ではなくゴールドなど現物資産として保有している場合に当てはまるだろう(=株券、債券、証券は、遠からぬ将来紙くずとなる運命を避けるのが困難なため)
そしてもうひとつ、ここで取り上げたいのが、短期投機筋の「攻勢限界点」を見極めて参戦するという方法である。
§ ゲリラ戦で短期投機筋の相場操縦に対抗する
基本は
「政府関係者や格付け機関と連携して攻めてくる短期投機筋は、一体どの水準まで売り及び買いを仕掛けて来るのか?」――そのリーチ、攻勢限界点を統計的に導き出して、タイミングを狙って出動するというものである。
彼らとて保有資金が無限大ということはない。
いくら相場操縦を仕掛けたとしても、自ずと限界は見えてくるのである。
我々としては、普段は静かに身を潜めておく(=トレード頻度を下げる)。
そして、
短期投機筋が仕掛けバテを起こし、息切れを起こした頃を見計らって、ゲリラ戦を挑み、一戦離脱するのである。
短期投機筋が仕掛ける相場操縦の限界点を統計的に導き出し、補正を適宜加えて、ゲリラ戦を開始するタイミングを定めることが重要なポイントとなる。
そこで活躍するのが、人間の代わりに膨大な量の数値データを解析してくれる人工知能(=プログラムを用いて計算回路を構築する)である。
我々では、いくつかのデータマイニング手法を組み合わせて、誤差がなるべく少なくなるように調整を加えている。
寝耳に水的な政治的発表の前には、さすがに誤差が大きくなるものの、痛手はそれなりに抑えることができる。
最近では個人でも
本業のプログラマーが趣味の投資で、自動売買プログラムを開発して取引するケースが増えつつある。
メタトレーダーなど、取引プログラム開発が出来るソフトウェアを使うのである。
ただし、
そうした開発にはソフトウェア開発と金融の専門知識がかなり要求される。
その両方を満たせるほどの人ならば、既に行動を起こしていることだろう。
我々の場合は、Linuxで構築した計算処理用のサーバーで人工知能を開発しており、データベースと連携しながら、マーケットの解析を行っている。
自動売買プログラムではなく、
大規模なデータ処理に特化し、マーケットの動きの解析処理に重点を置いたプログラムである。
次回は、統計的に導き出した「仕掛け相場の限界点」を使って、どのようにトレードすれば良いのかについて触れる予定である。
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